サイクルブログ ♯16 「ものづくりとロードバイク」
- サイクリング部 筑波大学
- 4 日前
- 読了時間: 4分
こんにちは。50期の松島恵悟です。
今回はものづくり好きがサイクリングの傍ら作っているものを紹介します。
自己紹介
【名前】
松島 恵悟(まつしま けいご)
【学類・学年】
理工学群工学システム学類3年
【所属班】
ツーリング班
【出身】
京都府京都市
【趣味】
ものづくり(電子工作・プログラミングなど)
普段の暮らし
筑波大学「結」プロジェクトという組織で超小型衛星の開発をしています。
その他、研究室の計測システム開発を手伝ったり、Maker Faire Tokyoに出展したり、この夏はセキュリティ・キャンプ全国大会に参加したりしています。
ロードバイクとの出会いは高校の入学前でしたが、集団で走行するようになったのは大学でサイクリング部に入ってからです。
作っているもの
サイクリング部に入って半年ほど経った頃、集団走行中に友人が道路上の障害物を回避できず転倒してしまいました。幸い大事には至りませんでしたが、「もっと早く危険を知らせる方法はないか」と課題意識を持ちました。
その後のライドで、先輩が丁寧にハンドサインで危険箇所を伝達している姿を見ていた時、突然閃きました。
「待てよ...このジェスチャーの動き、6軸センサーで完璧に数値化できるじゃないか!」
手を下に向けて回す「路面注意」のサイン。この特徴的な動作は、3軸加速度と3軸ジャイロの組み合わせで検出できるはず。エンジニアの血が騒ぎました。「これは技術で解決できる問題だ!みんなの安全を、データとアルゴリズムで守れるかもしれない」
そして生まれたのが「UPCYCLE」プロジェクトです。
作っているもの - スマートハンドサイン検出システム「UPCYCLE」
現在開発中のシステムは、こんな仕組みです
【子機(手首装着)】
Spresenseマイコン + BMI270(6軸IMU)で200Hzの高速サンプリング
ジャイロ3軸(角速度)と加速度3軸のデータを取得
Complementary Filterで姿勢を算出
回転速度が80rpmを超えたタイミングでジェスチャー検出を開始
SpresenseのDNNRT(深層学習推論エンジン)でハンドサインを識別
BLE(Bluetooth Low Energy)で親機へ送信
【親機(サイクルバッグ内)】
Spresense + LTE拡張ボード + GNSSモジュール
子機からのBLE信号を受信すると、現在地をLTE経由でクラウドへ送信
30秒ごとに周辺の危険地点をサーバーから取得
危険地点に近づくとスピーカーでメロディを再生
【クラウド(Google Cloud Functions + Firebase)】
危険地点の位置情報を蓄積
Haversine公式で距離計算し、半径内の危険地点を返す
デバイスを手首に装着している様子

開発の苦労話 - ジェスチャー認識との格闘
実は、最初は「センサーの値が閾値を超えたら検出」という単純な方法を考えていました。しかし、実際に走行してみると、路面の振動やペダリングの動きでノイズだらけ...。単純なアルゴリズムでは無理だと悟りました。
そこで深層学習を使うことにしたのですが、これが想像以上に大変でした。
深層学習モデルを訓練するには、大量の学習データが必要です。しかし「路面注意」のハンドサインのデータなんてどこにもありません。自分で何度も何度もジェスチャーを繰り返して、データを地道に集めました。
また、SpresenseのDNNRTで動かすための軽量なモデル設計が必要でした。入力は200サンプル(1秒分)×6軸で1200次元。これを処理して「危険サイン」か「通常動作」かを判定します。
生の6軸データ(ジャイロXYZ + 加速度XYZ)を取得
各軸を-1.0~+1.0に正規化
信頼度0.9以上で検出と判定
試行錯誤の末、なんとか最低限の認識精度を達成できました!
サイクリング部での活動と今後の展望
現在、つくばのサイクリングコースで時折システムのテストを行なっています。
システムはまだ完璧ではありません。認識精度の向上やバックエンドの改良など、課題は山積みです。
でも、いつか筑波大学発の安全技術として、全国のサイクリストに使ってもらえたら...そんな夢を持って開発を続けています。
最後に - あなたの「好き」×サイクリング
サイクリングは風を感じられる素晴らしいスポーツです。そこに自分の「好き」や「得意」を掛け合わせると、もっと楽しくなります。
写真が好き → 絶景スポット巡り
歴史が好き → 史跡ツーリング
グルメが好き → B級グルメライド
データが好き → Stravaで走行記録分析
私の場合は「ものづくり」という趣味から安全システムを作っています。失敗の連続ですが、「いつか誰かの役に立つかも」と思うと、モチベーションが湧いてきます。
安全に気をつけて、自分らしいサイクリングライフを楽しみましょう!
【お知らせ】 UPCYCLEプロジェクトは開発にご協力いただける方を募集しています。 興味がある方は、ぜひ声をかけてください。技術談義、大歓迎です! 著者Twitter(現X): @mkv01
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